9月1日に栃木県方面へ出かけた話の続き。
真岡鐡道で終点の茂木(もてぎ)に着き、ちょっと街を散策。駅前通りを北へ行く。老舗の旅館や和菓子屋があったりして、なかなか趣のある町である。
八雲神社があったので、参拝。
八雲神社は出雲系の素戔嗚尊(スサノオノミコト)を祭神とする神社で、社伝によれば、鎌倉初期の建久二(1192)年に創建。当初はここから500メートルほど南の地にあり、寛政三(1793)年に現在地に遷座したという。
神社の向かい側には天然氷のかき氷屋があり、家族連れやライダーが訪れている。
通りを北へ行き、突き当りを少し東へずれて、さらに北へ行くと、那珂川の支流・逆川のさらに支流の坂井川を正明寺橋で渡る。川べりの道にはキバナコスモスが咲いている。
正面の丘が茂木城(別名・桔梗城)址の城山公園である。
茂木城は鎌倉初期に茂木氏が築いた城である。茂木氏は下野の豪族・宇都宮氏の一族で鎌倉御家人の八田知家の三男、知基が茂木郷の地頭となり、茂木氏を名乗ったのが始まりで、戦国時代には佐竹氏に臣従した。
江戸時代になると、佐竹氏は秋田に転封され、茂木氏も一緒に秋田へ移り、茂木城は廃城となる。慶長十五(1610)年には茂木は細川興元の所領となって、城山の麓に陣屋が建てられ、幕末まで細川家が領主となっている。
まるでイノシシか何かが掘り返したようにボコボコと荒れた散策路を上っていく。木のベンチが引っくり返っている。キノコがたくさん生えていて、彼岸花も咲いている。セミが賑やかだが、人の気配はない。
空堀の跡。
空堀を左に見て、階段を上ると芝生の広場に出る。それが出丸跡。たくさんの桜が植えられているが、今は毛虫のシーズンである。
出丸より一段低い場所に楼閣がある。その名も「姫の望楼」。茂木氏が佐竹氏とともに秋田へ去った後、病弱のため茂木に残された姫が蛇に姿を変え、城下の八雲神社で毎年夏に行われる祇園祭を出丸にそびえる杉の木の上から眺めていたという伝説があるらしい。そのため、祇園祭の時期には出丸に近づいてはならないとも言われているそうだ。
登ってみると、茂木の町を見渡せる展望台になっているが、床に小動物の糞がたくさん落ちていて、踏まないように歩くのが大変だった。
晴れていれば、遠くには筑波山や日光連山なども見えるのかもしれない。
出丸から知基橋で空堀を渡って、駐車場を通り抜け、本丸跡へ。上空を猛禽が飛んでいて、鳴き声から判断してツミらしかった。
ちょうど茂木駅に列車が到着するのが見えた。
まだ見るべきものはいろいろありそうだったが、この辺で切り上げ、山を下って、町へ戻る。
(茂木の町なかから城山を振り返る)
何やら懐かしいホーロー看板が・・・。こんなに揃っていると、ちょっとわざとらしい感じだが、「もてぎ昭和館」と書いてある。もう一組、親子連れが入っていったので、僕もつられて中に入ってみた。店内に昔のタバコ屋や自転車屋、茶の間などを所狭しと再現していて、入館料でも取られるのかと思ったが、誰も出てこない。どこまで入っていいのかも分からない。正体不明の施設だ。
あとで調べてみると、茂木町が「昭和レトロ」を売りに観光客誘致に乗り出していて、町が収集した昭和レトロの品々を展示する施設として今年春にオープンしたらしい。週末中心に開館しているとのこと。
じっくり見てみたかったが、現地では個人の店だと思っていて、勝手に見ていいのかどうかも分からなかったので、3枚ほど写真を撮っただけで出てきてしまった。
さて、この後、13時30分発のバスで宇都宮へ向かう予定である。現在の時刻は12時45分。茂木駅にソバ屋があったので、そこで昼食をとるつもりにしていたが、先ほど気になった八雲神社前の天然かき氷の店をのぞくと、どうやら食事もできるらしい。ということで、入ってみた。満天家というお店。
こちらも昔懐かしい建築で、店内は座敷になっている。昭和なのか、もっと古いのか。食事ものではピザやビーフシチュー、ステーキ丼などのメニューがあったが、バーガーセット(サラダ、ドリンク付き、800円)とゆずレモンのかき氷(500円)を注文。ハンバーガーもいろいろ選べて、トマトベーコンにする。
もちろん冷房が効いているが、額から汗が流れ落ちるので、扇子でパタパタあおぎながら待っていたら、おじさんがハンバーガーを運んできた。一目見ただけで美味しそう。実際、これまでに食べたハンバーガーの中で個人的にはダントツの美味さだった。もっとも、マクドナルドなどのチェーン店のハンバーガーしか食べたことがないのだけれど。
その後、かき氷。天然かき氷というのは初めてだが、これも氷がふわふわで、初めての食感だった。
このふわふわ感は天然氷ならではだそうだ。「ハンバーガーもすごく美味しかったです」というと、「料理のほうが本業なんで」とのこと。そうだったのか。なるほど。たぶんビーフシチューやステーキ丼も相当なものなのではないか。僕の前後にもお客さんがいたが、皆さん、注文するのはかき氷だけだったし、あとでネットで見ても、ほとんど天然かき氷が美味しい店としてばかり紹介されているのだった。
バスの時間まであと10分ほど。駅に戻ると、まだバスの姿は見えなかった。
ジュースの自動販売機にアオマツムシ。
ほどなくJRバスがやってきた。ここから宇都宮駅まで1時間半近くかかる。
この後、天気が激変する。
つづく