ソロ歌手としての活動開始から6年目を迎えた伊藤蘭さんのコンサートツアーが今年も8月25日から始まり、大阪、仙台に続く3公演目、9月19日、さいたま市の大宮ソニックシティまで行ってきた。今回のツアータイトルは「伊藤蘭~ Over the Moon~ CONCERT TOUR 2024-2025」。来年1月まで全国9都市をめぐるツアーである。以下、ネタバレを含みますので、これからコンサートに行かれる方はご注意ください。
ソニックシティには初めて来たが、かなり大きなホールである。今回の席は今までで一番ステージに近い、かなり良い席が当たった。
開演は18時30分。客席が暗くなり、ステージにすでにおなじみのバンドメンバーが大きな拍手に迎えられて登場し、イントロが流れ出す。音がズドンズドンと腹に響く感じ。そして、大歓声に迎えられて、ヒョウ柄の衣装に身を包んだ蘭さん登場。ツアー初日の大阪公演の動画が一部公開されていて、すでに目にしていたが、大阪限定というわけではなく、埼玉でもヒョウ柄だった。
色とりどりのペンライトの光が客席を埋め尽くし、「ランちゃ~ん」の声があちこちから飛ぶ。最初から前のほうは総立ちである。座っていてはステージが見えないので、僕も立つ。たぶんそうなるだろうとは思っていたが、立ち上がると気分の高揚感も違う気がする。
1曲目は「ICE ON FIRE」。2ndアルバムの曲で、初めて聴いた時はヘヴィなロックサウンドにびっくりしたものだが、ライヴでやると異様にカッコイイ。個人的には毎回聴きたいレパートリーで、いきなりやってくれて嬉しい。
2曲目は「恋するリボルバー」。最初から飛ばしている。これまでで一番近い距離で見る蘭さん。今までで一番若く見えるんですけど・・・。声も若々しくパワフルで、キャンディーズ時代を含めても今がヴォーカリストとしてピークなのでは、と思ってしまう。毎年、最高を更新し続けているのがスゴイ。
3曲目が3rdアルバムから「なみだは媚薬」。
ここで最初の挨拶。今回のツアータイトルには「キャンディーズ」が入っていないけれど、キャンディーズの曲はやらないということではなくて、もう蘭さんの中でキャンディーズの曲は自分の一部になっているということで、これからもどんどん歌っていくとのこと。2019年のファーストソロコンサートの時は自分一人だけでキャンディーズの曲を歌って、どう受け止められるのだろうか、という不安もあったのかもしれないが、それが熱狂的に受け入れられて、今ではソロの曲もキャンディーズの曲もすべて自分の曲という確信が持てるようになったのだと思う。個人的にはソロ作品にも好きな曲がたくさんあって、ライヴで聴きたいけどなかなか聴けないレパートリーも増えてきた。蘭さんとしても、ツアーごとにセットリストを考えるうえで、ぜいたくな悩みが増したのではないだろうか。
とにかく、キャンディーズの曲もどんどん歌っていくということで、早くも4曲目に登場。しかも、オリジナルとは違うリアレンジヴァージョンで披露された。
4曲目「アン・ドゥ・トロワ」、5曲目が「やさしい悪魔」。
どちらも吉田拓郎の作曲だが、まったく新しく生まれ変わって、どちらもよかった。アダルトなムードの落ち着いた方向に行くわけではないところがいい。振り付けはオリジナルのまま。聴きながら、ああ、こういうのが聴きたかったのだ、と思う。これまでキャンディーズの曲はオリジナルに比較的忠実なアレンジで演奏されることが多かったが、全然違うアレンジで聴いてみたいという欲求が僕の中にはずっと前からあったということに改めて気がついた。この試みはこれからもどんどん続けてほしいです!
さらに吉田拓郎作品でライヴで歌われるのはキャンディーズの解散コンサート以来という6曲目「銀河系まで飛んで行け!」。こんな曲まで聴ける日が来るとは!
それから、バンドリーダーでキーボードの佐藤準さんの書いた曲に蘭さんが詞をつけた7曲目「FUNK 不肖の息子」。それまでの作風とはまるで違うテイストの作品で、これもちょっとびっくりさせられた楽曲だが、一度聴くとクセになる。
その前に「雌豹の皮を脱ぎ捨てて」とヒョウ柄の衣装を脱いで、左右非対称なデザインでキラキラした白っぽい衣装にチェンジ。
さらに8曲目「明日はもっといい日」、9曲目「Shibuya Sta. Drivin' Night」と都会的でおしゃれな曲が続く。
昨年発売の3rdアルバムからの3曲に続いて、最新シングルの2曲。10曲目が「風にのって~Over the Moon」、11曲目「大人は泣かない」。歌う前にさりげなく物販コーナーの宣伝。
「ご散財のコーナーがありますので、みなさま、無理のない範囲で・・・」
ここで15分間の休憩。休憩が入るのは今回が初めて。ステージの上の人にとっても下の人にとっても体を休めることは大切だ。やはり全体の平均年齢が高いので・・・。
そして、ステージが再開されると、まずはバンドメンバーだけが登場して、12曲目「SUPER CANDIES」からスタート。ギタリスト是永功一のヴォーカル入り。会場全体がコール&レスポンスで熱狂的に盛り上がる。これも外せない曲だね。
そして、真っ赤な衣装で蘭さんが登場して13曲目「危い土曜日」。14曲目が「その気にさせないで」。
ここで今回のサプライズともいえる15曲目「わな」。ミキちゃんセンターの曲で、まさか「あいつはしくじった~」と蘭さんが歌う日が来るとは予想していなかった。今日の衣装も「わな」の赤い衣装をイメージしたものか?
16曲目が「哀愁のシンフォニー」。サビの部分で紙テープのかわりにみんながペンライトを一斉に振り上げる。17曲目「ハートのエースが出てこない」。18曲目はスタンドマイクが用意されて「年下の男の子」、19曲目が「暑中お見舞い申し上げます」、そして本編ラストが「春一番」。
圧倒的な演奏力とパワーあふれるバンドサウンドをバックに歌う蘭さん。派手な演出に頼ることなく、音楽のもつ力だけで勝負しているところが素晴らしい。51年前にキャンディーズとしてデビューして以来、歌手として、女優として、たくさんのキャリアを積み重ね、芸能界でも大ベテランといっていい存在なのに、良い意味でベテラン感がないというか、常に新しいことにチャレンジして、いつまでもフレッシュさを失わないというのがこの人のスゴイところなのではないか、と思ってしまう。客席からは男性だけでなく女性からも何度も「かわいい~」という声が飛んでいたが、みんなにそう思わせるのも、きっとそういうことなのだろう。
それにしても、すごい一体感。キャンディーズ時代、掟破りの解散宣言で当時の芸能界のアンシャンレジームに反旗を翻して、先輩芸能人たちから冷やかな視線を向けられ、体制側芸能マスコミの批判を浴びながら、大逆風の中、ファンの支持を頼りに強行突破して解散を成し遂げた「キャンディーズ革命」の共犯関係の記憶こそが他のアイドルとファンの関係とはちょっと違う絆の強さを生み出しているのではないか、と当時はまだコドモだったので、キャンディーズの解散を遠くから眺めていることしかできなかった僕は分析しているのだけれど・・・。
さて、アンコールで蘭さんはパープルの衣装で登場し、21曲目「美しき日々」。そして最後は「春になったら」で明るく前向きにしめくくった。
「春になったら何をしよう 夏の終わりからもう考えています~♪」
蘭さんもそう言っていたけど、今日はあっという間の22曲だった。
終演後、大宮の月。
会場にはピンクレディーの未唯mieさんが来ていたらしい。インスタに蘭さんとのツーショットが公開されていて、奇跡のツーショットと話題になっている。