都民の森(その1)

 またか、と思われそうだが、先週末にまたまたまたまた檜原村の都民の森へ行ってきた。野鳥や野生動物の観察と星空ウォッチングの宿泊型イベントである。昨年12月以来だが、5月のイベントは2年ぶりだ。
 14日の土曜日、朝早く家を出て電車を乗り継ぎ、武蔵五日市駅まで行き、8時10分発の急行バスに乗車。新緑シーズンで登山客が多く、バスは3台出たので余裕で座れた。カーブの連続する道を1時間立ちっぱなしというのはやはりツライ。
 9時10分頃、標高1000メートルの都民の森に到着。途中、山々の新緑とフジの花がきれいだった。
 都民の森の駐車場にはクルマやバイク、自転車がたくさん来ている。僕も初めてここへ来た時は自宅から自転車だった。
 いつもならこの季節にバスを降りると、すぐにオオルリミソサザイの声が出迎えてくれるのだが、今日は聞こえなかった。そのかわり、ウグイスが木の枝先でさえずっていた。
 急坂を登って、森の拠点施設・森林館で受付。参加費として保険料200円を支払う。今回の参加者は子どもも含めて老若男女30人ほど。申し込み多数で抽選、ということにはならなかったようだ。個人的には助かるけれど、もっと参加希望者がいてもおかしくない魅力的なイベントだと思っている。

 10時から1泊2日、約24時間の自然教室開始。
 いつものように午前中は富士山麓を拠点に活動する動物写真家・中川雄三さんのレクチャー。写真や動画もすでに見たことがあるものも少なくないが、水中で撮影したカワガラスやカワネズミの動画など最新の貴重な映像もあった。
 とにかく、中川さんがいつも強調しているのは、日本がアマゾンやアフリカなどと同じぐらい多様な生物が暮らす地球上のホットスポットであるということだ。そして、それは東京でも言えることなのだ。ただ、そんな豊かな自然を守っていけるかどうかは人間次第であるわけだが…。
 檜原村内で交通事故に遭ったテンの標本。

 都民の森のシンボルツリー、トチノキ

 新緑。ウグイスやヒガラ、ヤブサメの声が聞こえる。

 昼食後は野外観察。上空をノスリが飛び、トビも舞っている。
 ノスリ

 高空を舞うノスリとトビ。

 この後、クマタカを目撃した人もいて、それが羨ましかった。クマタカはタヌキなども襲う大型のタカで、檜原村でも生息しているらしく、ペットの猫や子犬が攫われたという話もあるという。
 中川さんや、都民の森の名物ガイド浦野さんの案内でまずは三頭大滝への道を歩く。ウッドチップを敷き詰めた平坦で歩きやすい道だ。
 標高1078メートルからの眺め。

 山芍薬

 サラサドウダン。

 野鳥ではウグイスやオオルリヤブサメ、ヒガラ、ミソサザイセンダイムシクイキビタキなど。
 オオルリは姿も見ることができた。



 三頭大滝でちょっと休憩。

 吊り橋から滝を眺める。

 その吊り橋が昔はこの場所からよく見えたのだが、木々が育って、すっかり見えにくくなってしまった。

 そこから沢沿いに登る。


 ユキザサ。白い花が雪のようで、葉っぱが笹のようだ、ということでこの名前。ユリ科

 ゴジュウカラの巣。ムササビやモモンガなどが使った穴を土で埋めて小さくして利用。僕は見逃したが、実際にゴジュウカラが巣の中に入る瞬間を見た人もいた。


 リスが巣材用に樹皮を剥いだ現場。

 標高1162メートル地点で小休止。



 予定より遅れて16時35分に森林館に戻る。すでに都民の森の閉園時間を過ぎて、一般の登山客の姿はすっかり消えていた。山のどこかでコルリが鳴いている。
 この後、天体観測担当のボランティア、ナミキさんのレクチャーが30分ほどあって、それから、このイベントのために延長営業のレストランで夕食。


 日没時間を過ぎて、だいぶ空が暗くなった19時前。ヒナコウモリの出巣の様子を見る。コウモリの出す超音波の周波数を人間の可聴域まで下げるコウモリ探知機(バット・ディテクター)を通じて彼らの声を聴くことができるのだ。
 森林館にはヒナコウモリの巣箱があって、今は3匹ぐらいが入っているということだったが、出るわ、出るわ。20匹以上は出たようだった。ほかの場所から出た個体も多数いて、次から次へと薄暮の空に消えていった。
 コウモリウォッチングを堪能した後、研修室で夜行性動物の観察。
 窓の外の斜面にパンくずが撒いてあるのだ。動物たちの食生活のほんの一部で、餌探しの途中でちょっと立ち寄る程度のものだから、いつ出てくるか分からないし、出てこないかもしれないのだが、すぐにテンが来た。
 
 観察開始から2時間ぐらい何も出てこず、子どもたちだけでなく大人でも待ちくたびれてしまうことも少なくないのだが、今日は幸先がいい。子どもたちも大喜びだ。

 最初、1匹が来て、すぐに2匹が姿を見せ、合計3匹のテンが出没したようだ。テンは冬毛だと顔が真っ白だが、もうほとんど夏毛に変わって、真っ黒な顔になっている。冬は雪に紛れ、夏は闇に紛れて獲物を狙うためにこうなるらしい。


 テンが姿を消して、しばらくは何も出てこなかった。
 少し冷え込んだテラスでは天体観察。

 月と今日の一番星(月を除く)だった木星

 天体望遠鏡で月のクレーターを見たり、木星の縞模様を見たり…。木星の衛星は最初は3個だったが、あとになって4個目も見えてきた。やっぱり木星土星の輪は何度見ても感動する。最初は出ていなかった土星も21時を過ぎると、輪もはっきり観察できた。
 20時過ぎに出てきたハクビシン。顔がうまく撮れず。

 テラスで野鳥の声マネ達人・浦野さんがフクロウの声を真似ている。それに反応して、山のどこかで本物のフクロウも鳴いているようだ。
 浦野さんの野鳥の声マネは本当にうまいので、鳥に詳しい人ほどホンモノかと騙されやすい。僕も最初の頃はよく騙されたが、最近はだいぶ慣れた。この観察会に初めて参加した頃は浦野さんのアカハラキビタキの声マネに縄張りを侵害されたと勘違いした本物が声を返してきたり、そばに近づいてきたりするのに感動したものだ。テレビの旅番組などで都民の森が取り上げられた時にも浦野さんが声マネで野鳥を呼び寄せるのが定番ネタになっているし、皇族方が都民の森を訪れた際にも浦野さんが案内したそうだから、皇族の方々も浦野さんの声マネは耳にされているのだろう。特に秋篠宮家は何度も来ているそうだ。
 さて、南東の空には今月31日に地球に最接近するという火星。天体望遠鏡で見ると、まさに赤い星。でも、寒いんだろうなぁ。
 
 もう一度、月と木星

 今夜は動物はタヌキが出ず、テンとハクビシン(とコウモリ)だけ。ただ、山の中ではムササビやモモンガ、ヤマネ、ネズミ類などたくさんの動物が活動しているはず。もちろん、シカやイノシシ、ツキノワグマなども生息している。
 早起きしたため睡眠不足気味で、22時過ぎには持参の寝袋に潜り込んだ。

(追記)
 このブログを書いていた16日夜、21時23分にグラグラッと地震。直後に緊急地震速報のあのイヤな音も鳴る。
 震源茨城県南部でマグニチュード5.5。震源からはやや離れた茨城県小美玉市震度5弱を観測。東京は震度3だったというが、4に近い揺れに感じた。