霞ケ浦サイクリング(その2)

 11月2日(土)に茨城県霞ケ浦一周サイクリングに挑戦した話のつづき。

 土浦をスタートして、右岸を50キロ余り走って、現在、霞ケ浦(西浦)の最南部の潮来市までやってきた。西浦と利根川を繋ぐ北利根川常陸利根川)に架かる北利根橋を渡り、今度は左岸側を最北端の高浜をめざして北上していく。

 しばらく一般道を走って、湖岸に出ると「西浦左岸0.5㎞」の標識があった。走るにつれて、この数字がどんどん大きくなっていくわけだ。

 潮来市から行方市に入って、2キロ地点で休憩。風は気にならなくなったが、日陰はほとんどなく、少し暑く感じる。

f:id:peepooblue:20191104054628j:plain

f:id:peepooblue:20191104055048j:plain

 天王崎公園。対岸に霞む筑波山

f:id:peepooblue:20191104055213j:plain

 霞ケ浦の至るところに舟溜りがあり、小舟が繋留されている。今宿第二舟溜りにいた猫。

f:id:peepooblue:20191104055557j:plain

f:id:peepooblue:20191104085643j:plain

  右岸側は風のせいで湖面が波立っていたが、左岸側は波もほとんどなく、水鳥が多い。カワウやサギ類に加えて、今季初めてユリカモメの姿も確認。珍しい猛禽がいないかな、と思うが、トビばかり。ほかにオオバンカイツブリ。カモの姿も見られたが、シルエットになっていて種類は不明。

 また湖岸の草むらでジョウビタキの雄が2、3羽、縄張り争いしているのも目撃。一度に複数のジョウビタキを見たのは初めてだ。

 土手下にぽつんと大きな石仏が湖に背を向けて立っていた。

f:id:peepooblue:20191104090045j:plain

 自転車を止め、土手を下って、行ってみた。

f:id:peepooblue:20191104090152j:plain

 十一面観音のようだ。

f:id:peepooblue:20191104090244j:plain

 自転車に戻り、湖岸に沿って、黙々とひたすらペダルを踏み続ける。とにかく、信号もないので、意図的に休まない限り、ずっと走りっぱなしである。

 前方にタワーが見えてきた。霞ケ浦に架かる唯一の橋である霞ケ浦大橋の袂にある展望タワー。北海道へ行くため、東京から北海道行きフェリーの出る大洗まで走った際にこの橋を渡り、展望タワーに登ったことがある。

 ここで考えるのは、霞ケ浦大橋を渡るかどうかである。霞ケ浦(西浦)はYの字を左に傾けたような形をしており、スタート地点の土浦は左上の先端に位置し、潮来が下端である。そして、霞ケ浦大橋はYの字が左右に分かれる右側の枝の付け根部分に架かっている。ここで橋を渡れば、Yの字の右上部分はカットして土浦へ戻れるわけだ。このショートコースだと全長は90キロだという。一方、Yの字形の霞ケ浦をショートカットせずにきっちり回ると140キロ走ることになる(と、この時点では思っていたのだが、僕はY字の下端の潮来の街まで行かずに折り返したので、125キロらしい)。

www.ringringroad.com

 さて、なんとなくショートコースでもいいかな、と思いながら、霞ケ浦大橋までやってきた。時刻は13時過ぎ。展望タワー(虹の塔、60m)のほか、水に関する展示館や道の駅などがあり、賑わっている。
 ここで地元のおじさんサイクリストに会い、言葉を交わす。土浦を起点に僕とは逆コースでここまで走り、今日はこのまま橋を渡って土浦へ戻るとのこと。今日は気象条件も最高のサイクリング日和だが、やはり風が強い日はかなりキツイらしい。でも、家の近所にこんなコースがあるのは本当にうらやましい。

f:id:peepooblue:20191104094615j:plain
(地上60メートルの虹の塔)

 おじさんと別れ、やはり橋は渡らずに、Y字の右先端に位置する高浜をめざす。そこまで行って、橋の対岸に戻ってきて、Y字の左先端の土浦まで完走するつもりだが、高浜にも常磐線の駅がある。どこまで行くかは高浜で考えよう。

 土浦から潮来までの右岸側は一時的に湖岸を離れる区間も多かったが、左岸側はずっと湖岸を走る。景色はいいが、あまりに単調で、少し飽きてきたな、とも思う。

f:id:peepooblue:20191104103323j:plain

 こんな道がず~っと続く。

f:id:peepooblue:20191104103352j:plain


霞ケ浦サイクリング

 忘れていたのだが、2007年に廃止された鹿島鉄道(石岡~鉾田)がこの付近を走っていて、僕は1999年に桃浦という小駅で途中下車して、霞ケ浦の湖岸に立ってみたことがある。夕暮れ間近で、筑波山のシルエットとその年の夏に渡った霞ケ浦大橋、その時に登った展望タワーを遠くに眺めたという記憶がある。その地点をいつのまにか通り過ぎてしまった。桃浦駅の跡がどうなっているのか、訪ねてみたかったが、そのことを思い出したのは、だいぶ過ぎてからだった。

peepooblue.hatenablog.com

 霞ケ浦の北端近くになると、行方市から小美玉市に入る。小美玉というのは小川町、美野里町、玉里村が合併して誕生した合成地名である。

 道沿いにコスモスが植えられている。よく見ると、もう盛りは過ぎつつあるようだが、パッと見た感じはまだ十分に美しさを残していた。

f:id:peepooblue:20191104103521j:plain

  大井戸湖岸公園で休憩。水飲み場があったので、空になったペットボトルに水をくむ。

 湖面に浮かぶカモの群れなど眺めながら、のんびり走って、霞ケ浦の最奥部の高浜に着いた。走行距離は95キロぐらい。これからまた霞ケ浦大橋まで南下して土浦まで、というのも面倒くさくなってきた。高浜で終わりにしようか、という気になる。

 ということで、霞ケ浦にそそぐ恋瀬川沿いに北上。常磐線の線路をくぐると、三村水門があり、そのあたりで電車を眺めながら休憩。

 三村水門。

f:id:peepooblue:20191104135726j:plain

 恋瀬川を渡る常磐線

f:id:peepooblue:20191104135754j:plain

f:id:peepooblue:20191104140513j:plain

f:id:peepooblue:20191104141150j:plain

  高浜駅を通過する特急列車。

f:id:peepooblue:20191104140621j:plain

 恋瀬川サイクリングロード。 

f:id:peepooblue:20191104141252j:plain

 常磐線の上流側に架かる平和橋で恋瀬川を渡り、高浜駅へ行く途中、車にはねられたらしいタヌキが路上に転がっていた。

 15時に石岡市高浜駅にやってきた。土浦から常磐線で2つ目の駅だ。走行距離はちょうど100キロになるところ。

f:id:peepooblue:20191104153557j:plain

 ここから電車に乗ろうかとも思ったが、気が変わって、一つ先の石岡駅まで行ってみることにした。石岡は常陸国国府が置かれた歴史の町である。

 それで再び走り出す。
 霞ケ浦に近い低地にある高浜から今日初めて本格的な坂を台地上に登ると、まもなく古墳があった。

 府中愛宕山古墳(県指定史跡)。6世紀初めごろに築造された前方後円墳で、全長は96.6メートル、高さは8.5メートルとのこと。常陸国府が置かれる以前の有力豪族の墓なのだろう。

f:id:peepooblue:20191104154707j:plain

 近くにはもうひとつ、舟塚山古墳がある。こちらは国指定の史跡である。こちらも前方後円墳で、墳丘の全長は186メートル、前方部幅100メートル、後円部径90メートル、前方部の高さ10メートル、後円部の高さ11メートルで、茨城県内では最大、東日本でも2番目の大きさだという。

f:id:peepooblue:20191104155321j:plain

 古墳からは円筒埴輪が出土したほか、陪冢(ばいちょう)と考えられる17号墳からは短甲、直刀、盾などの副葬品が多数出土したという。5世紀前半の築造と推定されることから、当時から相当の有力者がこの地を統治しており、それ故に常陸国の成立時に国府が置かれたということなのだろう。

f:id:peepooblue:20191104155345j:plain

f:id:peepooblue:20191104155437j:plain

 舟塚山古墳は元の姿をよく留め、草が刈られたばかりでもあり、ホレボレするような古墳だった。よいものを見たと思った。

 石岡にはほかにも「茨城廃寺」など興味深い史跡がいろいろあるようだが、それより先に見つけてしまった。セイコーマート

 セイコーマートは札幌市に本社をもつ北海道のコンビニで、店内調理のお弁当などが魅力的で、北海道を自転車でツーリングした時には見かけるたびに立ち寄ったものだ。自分はまるでセイコーマート巡礼をしているのではないか、と思うほどで、セイコーマートを見かけながら、素通りしたことは一度もないのではないか、と思うほど、あちこちでお世話になった。

 セイコーマートの実力はけっこう有名で、最近もTBSラジオの番組でセイコーマートのおにぎりの美味しさが話題になり、TBSの外山惠理アナがわざわざ北海道までおにぎりを買いに行ってしまったほどである。

 そのセイコーマートがわざわざ北海道まで行かなくても、なぜか茨城県と埼玉県にだけ出店しているのだ。僕は過去に牛久や笠間で見つけて、買い物している。そのセイコーマートを石岡でも見つけてしまったわけだ。もちろん、入店。

 石岡ばらき店。

f:id:peepooblue:20191104161819j:plain

 店内には北海道限定商品も置いてあり、初めて見たハスカップ味の「いろはす」と店内調理のホカホカのカツカレーを購入。昼食抜きだったので。

www.seicomart.co.jp

 走り出してすぐ「茨城」の地名発祥の地というのがあった。このあたりの地名が石岡市茨城であるらしい。

 『常陸国風土記』の茨城郡の条によると、昔、このあたりに山の佐伯、野の佐伯という凶暴な土ぐもが山の斜面や崖に穴を掘って住んでいた。土ぐもは多くの仲間を率いて里人の食べ物や着物を奪っていたので、人々は大変困っていた。そこで黒坂命(くろさかのみこと)という人が土ぐも退治に乗り出し、土ぐもたちが穴から出ている間に穴の入口を野茨の枝でふさぎ、城(き=柵)を作り、土ぐもを攻撃。穴に逃げ込もうとした土ぐもたちは茨のとげで傷つき、山の佐伯、野の佐伯も退治されてしまった。茨で城(柵)を作って土ぐも退治したことから茨城の地名が生まれたというのである。

 「土ぐも」というのは要するに朝廷に従わない土着民のことで、それを黒坂命という人物が征伐したという話のようだ。ふーん、と思うだけだが、「黒坂命」といえば、午前中、美浦村あたりを走っている時に黒坂命古墳と書かれた案内標識があった。同じ人物の墓なのだろうか。

 ところで、そばにあるバス停の名前は茨城ではなく、茨木なのだった。

f:id:peepooblue:20191104165048j:plain

 16時前に石岡駅に到着。駅前のベンチでカツカレーを食べる。

 石岡駅前には「みんなのタロー」という銅像があった。

f:id:peepooblue:20191104165417j:plain

 タローは昭和39年に玉造から石岡の幼稚園に通う園児と石岡駅ではぐれ、石岡市立東小学校に迷い込み、以降、タローは学校犬として飼われることになった。しかし、毎朝夕、片道2キロの道のりを石岡駅に通い、改札口で主人を待ち続けることになる。タローは石岡駅のアイドルとなり、市民に愛されたという。駅通いは昭和56年7月20日にタローが18年の生涯を終えるまで17年間も続いたのだった。タローは東小学校の生徒によるお別れ集会の後、土浦市のお寺に埋葬されたという。

 

 駅前で自転車を分解し、16時34分発の常磐線に乗る。19時過ぎに帰宅。

 今日の走行距離は105.8キロ。