高尾山と日影林道(1)

 先週は八王子城跡に出かけたが、今度はまた高尾山に行ってきた。一番安上がりで気軽に登れて、そのわりにはいろいろ楽しめる山で、毎週登ってもいいかなと思うぐらいである。

 京王線高尾山口駅下車。今回はどのルートで登ろうか。一番面白いと思うのは6号路だが、昨日までの大雨で、沢を飛び石で登る区間が大変かもしれないと考え、無難に舗装された1号路を行く。

 道沿いの沢がいつもより増水して、普段は水がほとんど流れていないところからも小さな滝のようになって水が流れ込んでいる。

 いきなりキビタキの声が聞こえ、ほかにもガビチョウ、オオルリメジロエナガ、ウグイス、イカル、ヤブサメなどの声を聞くが、姿は見えず。

 山上のケーブルカーの駅前で天狗焼きを買う。高尾山に来ると、なぜか食べたくなるのだ。帰りはここを通らない予定なので、まだ時間は早いが1個購入。前は確か140円だったが、いつのまにか200円に値上がりしていた。

 先週登った八王子城山。その山体を圏央道のトンネルが貫通している。

 薬王院浄心門の脇から3号路に入る。高尾山の南側の山腹を等高線に沿うように続く曲がりくねった道で、最初に下り、最後に上りがある。道幅が狭いので、すれ違うにも、譲り合いが必要。ただ、他の道に比べると、人は少なめか。ただ、この道は植物好きが多いようで、あちこちで身をかがめて写真を撮っている。高尾山は植物の宝庫でもあるのだ。

 アサギマダラの幼虫の食草、キジョラン。漢字だと鬼女蘭。タネについた白い綿毛が鬼女の白髪に見えるということで、この名前。ただし、ラン科ではなく、キョウチクトウ科のつる性植物(かつてはガガイモ科に分類されていた)。

 イナモリ草。

 いくつもの沢を渡りながら進むと数人が写真を撮っている場所があった。何やら変わった花が咲いている。そばにいたおばさんに「これは何という花ですか」と聞いてみると、「ムヨウラン」だと教えてくれた。葉っぱがないから無葉蘭らしい。

 落ち葉と同じ色で、なかなかうまく撮れない。それはそこにいる人たちもみんな同じようで、みなさん苦労して何度もカメラやスマホで写真を撮っては「ピンボケだぁ」などと言っている。僕もまともな写真はほとんど撮れず。

 それにしても、こんな名前の植物は初めて知った。彼岸花のように花後に葉が出てくるのかと思ったら、そうではなく、そもそも葉がないのだそうだ。光合成ができず、自分で栄養素を作れないので、ベニタケなどに寄生して養分を吸収するらしい。このような植物を菌従属栄養植物というそうだ。

 さらに変な植物にも遭遇。

 小さな妖怪の一家のようだ。

「この白いのは何ですか?」とそばにいたおじさんに聞いてみると、「ギンリョウソウ」だと教えてくれた。葉緑素がなく、やはり光合成はせずにベニタケなどに寄生するらしい。ちょっと不気味で、幽霊茸などと呼ばれたりもするそうだが、キノコではない。漢字だと銀竜草と書くそうだ。

 もちろん、こんな植物も初めて知ったが、あとで調べてみたら、これがツツジ科だということにも驚いた。

 キビタキやガビチョウ、ホトトギス、ウグイス、アオゲラなどの声を聞きながら歩き、遠くからかすかにアオバトの声も聞こえる。どこかでそれらの鳥の姿が見えないかと何度か立ち止まったが、見つけることはできず、そのまま山頂に到着。相変わらず人が多く、山頂の標識の前には記念撮影をする人たちの行列ができていた。

 まだ11時45分。このまま小仏城山方面へ向かう。このあともいろいろな生き物と遭遇する。

 つづく