ひたちなか海浜鉄道の旅(その1)

 昨年の夏に十数年ぶりに「青春18きっぷ」を購入して、日帰りで5回、あちこちへ出かけた。それぞれに面白い旅だったので、今年もまた買ってしまった。「青春18」といっても年齢制限はないが、使用期限はある。夏は7月20日から9月10日まで。この期間中の5日間、全国のJR線の普通列車(快速を含む)が乗り放題である(1枚の切符を5人で1日という使い方も可)。ということで、夏の間に5回(5日間)出かけなければならない。しかし、僕の場合、最近は列車に乗ることよりも行った先で歩くことのほうがメインになりつつあるので、連日の猛暑を考えると、出かけるのが億劫にもなる。去年の上越線土合駅群馬県)の地底ホームの寒さはまた味わいたいな、と思うが、同じ場所に行くのもどうなのか、という気もする。

 とりあえず、まず第一回目として、これも去年出かけた場所なのだが、別の興味から茨城県ひたちなか海浜鉄道沿線を昨日(8月6日)、旅してきた。

 上野6時31分発の常磐線勝田行きに乗車。最初は普通車に座っていたが、この先、混んでくることを予想して、ホームでグリーン券を買って、グリーン車に移動。勝田まで約2時間。首都圏の普通列車グリーン席は51キロ以上は800円なので、そんなに贅沢というほどではない。

 ということで、空席の多いグリーン車常磐線を行く。北千住、松戸、柏、我孫子・・・と各駅では多くの乗客が待っていたが、目の前にグリーン車が停まったので、慌てて普通車の乗車口に移動したりしている。乗ってくる人は少ない。

 2両のグリーン車(2階建て)には旅客機のCAのような女性乗務員がいて、今はもうノーマスクだった。

(こんな写真を撮るところが、いかにもふだんグリーン車に乗らない人である)

 土浦を過ぎて、車窓に蓮田が広がった。このあたりはレンコンの産地である。今がちょうど花の季節で、白い花が点々と咲いている。蓮の花というとピンクがかった色が思い浮かぶが、食用の蓮の花はほぼ白である。

 緑が鮮やかな田園風景の中を走り抜けて、水戸に到着。ここから水郡線に乗り換えて郡山方面へ行くのも面白そうだ、と考えたが、当初の予定通り、勝田まで行く。8時33分着。

 ひたちなか海浜鉄道の乗り場へ行き、1日フリー切符を購入。定価は1,000円だが、今年も引き続き、ひたちなか市助成金が出ているらしく、600円だった。終点の阿字ヶ浦までの片道運賃が570円なので、かなり格安になっている。

 すぐにやってきたのは、昨年も乗ったキハ3710-02。地元に工場がある小松製作所とタイアップしたラッピング車両で、車内にもコマツの重機を紹介するポスターが掲示されている。ショベルカーなどだけでなく、対人地雷除去機なんていうものまで製造していることが分かる。

 車内は地元客や行楽客で座席がほぼ埋まり、8時42分に発車。車内アナウンスで「冷房の効果を高めるため、車内灯を消しています」と言っていた。電力容量の問題だろうか。千葉県の銚子電鉄で走行時は容量オーバーとなるので冷房を止めて、起点と終点の駅に停車中のみ冷房がついていたのを思い出す。

 さて、列車は最初は住宅街を行くが、やがて田園地帯へと出ていく。窓の外を眺めていた小さな女の子が「カモメが飛んでる」というので、見ると、シラサギだった。

 15分ほどで那珂湊に到着。ここで対向列車と行き違い。乗客の大半がここで降りる。ホームでは朝市が開かれ、地元の野菜などを売っていた。

 那珂湊の次の殿山を過ぎると、右車窓に海が見え、列車は一面のさつまいも畑の中を行く。左車窓の彼方にネモフィラの丘で有名な国営ひたち海浜公園の観覧車が見える。

 見渡すかぎりのさつまいも畑。葉裏が白く光って、花が咲いているように見える。この土地のさつまいもはほとんど干し芋になる。 

 途中の平磯や磯崎でも下車客があり、車内はガラガラになって、9時11分に終点の阿字ヶ浦に到着。

 構内にはSL時代の給水塔(上の写真の右側)が残り、ホームも非常に長い。これはかつて海水浴シーズンに上野から国鉄の臨時急行「あじがうら」が乗り入れていたからだ。ホームの長さは7両分あるらしい。

 下の写真は「あじがうら」ではなく、上野から水郡線に直通していた急行「奥久慈1号」(水戸まで「ときわ5号」と併結)を土浦駅で1975年頃に撮影したものだが、同じキハ58系がここまで乗り入れていた。

 その長いホームの先で線路は途切れているが、ひたちなか海浜鉄道はここから3キロ余り先の国営ひたち海浜公園まで延伸が決まっている。ローカル線の廃止が相次ぐ現代においては異例であり、画期的でもある。すでに延伸工事が始まっているのかと思ったが、特に工事が行われている様子はない。延伸が実現した暁には上野から直通の臨時列車「ネモフィラ」号が・・・なんてことにはならないだろうなぁ。

 構内に留置(安置)されたキハ222を御神体とする鉄道神社

 1962年に製造され、北海道の羽幌炭鉱鉄道で走った後、1971年にこちらへやってきた車両。雪国ならではの旋回窓が特徴。2015年に引退して、その後、神様になる。

 運転士が車両の前面に水をかけているのは窓を洗っているのか、車体を冷やしているのか? 屋根にも水をかけていた。

 さて、今回は阿字ヶ浦から海沿いに那珂湊方面へと歩いてみようと思っている。しかし、海岸へ下る前に昨年も参拝した「ほしいも神社」へ。

 これは堀出神社。ミンミンゼミやアブラゼミが賑やか。暑い!

 この土地の古社、堀出神社の境内に令和元年に創建されたのが「ほしいも神社」。ほしいものは総て手に入るようにという欲張った願いを込めた神社であるらしい。

 黄金色というか干し芋色の鳥居、干し芋形の絵馬、干し芋色のバイク・・・。

 絵馬には自分の名前と欲しいものを書き込むようになっている。ジャニーズ・タレントの名前があったので、本人がここへ来たのか、と思ったら、ある女子の欲しいものがそのタレントなのだった。

 ただ、芸能人もたくさん来ているようだ。

 茨城県出身の磯山さやかとかカミナリとか。あと茨城のライバル、栃木県のU字工事とか。森三中の黒沢かずこが2回も来ていて、なぜかと思ったら、ひたちなか市出身なのだった。フルーツポンチの村上健志も茨城出身だ。

 跨って記念撮影ができる干し芋バイク。一見カッコよく見えるロゴはHoshiimo Jinjaと書かれている。

 さて、ここから海岸へ下りて、散策するつもりだが、続きはまた明日。