軽井沢から草津へ

 9月9日(土)、群馬県の横川駅から碓氷峠を徒歩で越えて、4時間かかって軽井沢駅までやってきた。時刻は正午を少し過ぎたところ。

 当初の予定は軽井沢から草津温泉まで行って、久しぶりに温泉に浸かって帰るというものだったが、小諸に出て、小海線に乗り、小淵沢から中央本線で帰ってもいいかな、という気持ちになった。

 軽井沢からは信越本線の線路が現役だが、新幹線開通を機にJRから切り捨てられ、第三セクターの「しなの鉄道」となっている。

 国鉄時代の旧軽井沢駅舎。

 ここにも横軽で活躍したEF63が保存されている。

 駅前からの眺め。いかにも火山らしい形状の山は「離れ山」といい、浅間山からは離れているが、2万年以上前に浅間山のマグマが噴出したデイサイト~流紋岩質の溶岩ドームらしい。麓から200メートルほどの高さで、今の天皇陛下が5歳の時に初めて登られた山だそうである。穏やかな姿の山だが、こんな山がこの先、軽井沢の街の真ん中に誕生するとしたら、粘り気の強いマグマだから爆発的な噴火と火砕流を伴い、大災害は間違いなしである。

 父のアルバムにも碓氷峠から望む同じ山の写真があり、そこに「離れ山」と書いてあったので名前が分かり、調べてみたのだ。

 昔、軽井沢と草津温泉を結んでいた草軽電鉄の機関車。大正時代に順次開業し、1962年に廃止。一度乗ってみたかった。

 とりあえず、昼食をとろうと駅前を歩いていたら、12時40分発の草津温泉行きバスがちょうど出るところで、つい乗ってしまった。草津の到着予定は13時56分。それまでは昼食抜きだ。横川からたぶん15キロ以上は歩いて、腹が減っていたのだが・・・。

 草軽電鉄の後身にあたる草軽交通のバスは観光バスのような座席で、ほぼ満席で発車。ところが、数分走って旧軽井沢に着くと、そこでけっこう下車客があった。横川から歩いてきた者としては、このぐらいの距離なら散策気分で歩けばいいのに、と思ってしまう。

 とにかく、旧軽井沢でたくさん降りたのだが、それ以上に乗ってきて、車内は完全に満席になった。

 しばしば、東京の原宿のようだ、などと言われる軽井沢だが、街路樹のモミジが早くも色づいている。

 最初は道が混んでいたが、市街地を抜けて、カラマツ林の続く別荘地帯に入ると、快調に走り出した。この辺を初夏の頃にバードウォッチングしながら散策するのは最高だろうな、と思う。

 観光名所の白糸の滝で大勢下車して、だいぶ空席が多くなった。バスは高原地帯を走り、やがて群馬県に入る。浅間山は雲に隠れて、裾野しか見えない。このあたりの大地はすべて浅間山の噴火に伴う膨大な噴出物に覆われてできているのだろう。

 北軽井沢には草軽電鉄の駅舎が残り、ここにも機関車が保存されていた。

 キャベツやレタス、トウモロコシなど高原野菜の畑を見ながら走ったバスは坂を下り、吾妻川の渓谷を渡ると、再び登り。JR吾妻線の線路が見える。羽根尾駅前を過ぎ、またぐいぐいと登って、草津温泉バスターミナルに到着。

 町に出ると、硫黄のにおい。とりあえず、湯畑を見に行く。大変な賑わいで、外国人もたくさんいる。有名な「湯もみ」の見学には大行列ができている。

 2018年1月23日に突如噴火した本白根山を含む草津白根山の東麓に位置し、pH2という強酸性の温泉。日本一の自然湧出量を誇り、いくつもの源泉をもち、泉温も50℃から95℃と高温。古くから日本を代表する名湯として知られている。

 白旗源泉。

 とりあえず食事を、と思うのだが、なんとなく空腹も治まってしまったし、昼の営業を終えた店が多いので、温泉に入ることにする。

 温泉街のはずれにある「西の河原露天風呂」(700円)で入浴。今までに入った中で一番広いのではないかと思うほど広い露天風呂で、空いていて、最高の極楽気分だった。ここには外国人の姿はなかった。

 温泉の下流の西の河原。随所に温泉が湧き、湯けむりを上げて川が流れている。西の河原は確かに温泉街の西にあるが、「賽の河原」でもあるようで、あちこちに石が積んである。

(正面の木立の奥が露天風呂。人が集まっているのは足湯)

 さて、帰るか。15時50分のバスに乗り、吾妻線長野原草津口駅まで25分。一応、草津温泉の玄関口ということになっているが、駅前には何もない。

 この駅から道路を挟んだ反対側には利根川の支流・吾妻川が流れ、峡谷をなしているが、その流れをせき止めて造成されたのが、建設続行か中止かで政治問題にまでなった八ツ場(やんば)ダムである。結局、工事は続けられ、2020年に完成している。その上流端がこの付近であるが、水はほとんど溜まっていない。普通に川が流れていた。ただ、両岸はコンクリート護岸となり、渓谷美は失われている。

 ダム建設によって、川原湯温泉街を含む多くの集落が水没し、吾妻線も一部区間が水没するため、新線に切り替えられている。

 渋川方面を見ると、かつての線路は吾妻川の左岸を通っていたが、今は新しい橋で対岸に渡り、約12キロほど右岸側を走るようになっている。新線区間はほとんどがトンネルである。

 長野原草津口16時39分発の高崎行きに乗るため、ホームで電車を待っていて、気になる山があった。

 山の陰に潜むパンチパーマの巨人の頭だけ見えている・・・みたいな山。

 あとで調べてみると、丸岩というらしい。どうしてこんな形の山ができたのだろう。群馬県には赤城山榛名山妙義山など個性的な山容の山がたくさんある。

 電車が来た。

 この電車で高崎に18時03分着。夕食を取り、19時15分発の湘南新宿ライン小田原行きのグリーン車に乗って、21時04分に新宿着。

 自宅から自宅で35,922歩。
 とりあえず、これでこの夏の「青春18きっぷ」を使い切った。