2月12日に神奈川県の伊勢原市から厚木市にかけて歩いた話の続き。小田急線の伊勢原駅から1時間半歩いて日向薬師に着いたところから。
本堂の仏像を拝んだ後、隣の宝殿も300円払って拝観。ここにある仏像は関東でも屈指のものだろう。堂内右手に丈六の薬師三尊、左手にやはり丈六の阿弥陀如来。正面には御本尊の鉈彫りの薬師三尊を安置した厨子を中心に左右に四天王が二体ずつ、さらに十二神将が六体ずつ並び、どれもみな大きくて、ホレボレするような仏像である。いずれも平安末期から鎌倉時代のものだが、十二神将は顔の赤や青や緑や白などの彩色が残り、明治の廃仏毀釈の危機を乗り越え、全員無事で本当によかったと思う。これらの仏像を守ることができたのは当時の地元・日向の人々の努力のおかげでもあったそうだ。
さて、日向薬師をあとに裏口から出ると、厚木市の七沢方面に通じる薬師林道がある。これを歩いてみよう。
しばらく歩くと、右側の視界が開け、相模平野が眼下に広がる。遠くには相模湾も見え、江ノ島の島影が確認できる。意外に標高が高い地点にいることが分かった。林道の最初は上りだったが、途中から下り基調となる。
江ノ島。
林の中でガサガサと音がしたので、見たら緑色の鳩、アオバトだった。かなり近かったが、カメラを向ける前に林の奥に飛んでいってしまった。写真が撮れなかったので、2019年5月に檜原都民の森で撮影したアオバト。
薬師林道はさすがに歩く人には会わないが、たまにクルマが通り、ロードバイクのサイクリストも通る。
猿や鹿でも出てこないかな、でも熊は困るな、などと考えながら歩いていたが、野生動物は何も出てこなかった。
20分ほどで薬師林道展望台というのがあったので、登ってみた。ここはもう厚木市内らしい。
景色は格別というほどではなかったが、夜景はきれいかもしれない。カケスが飛んでいた。
さらに下っていくと、「亀石」というのが山林の中にある。
「この先60m」というので、針葉樹の林の中に入って行くと、すぐにそれらしい巨岩があった。
高さ4メートル、長さ10メートルほどで、岩の上に何本か樹木が生えている。丹沢山地はもともと南の海で誕生した海底火山が北上してきて日本列島に衝突したものだから、火山性の地質で、これも火山灰や火山礫が固まった凝灰岩のようだ。
丸太や枝が何本も支柱のように立てかけてあるのは石が転げ落ちないようにということだろうか。
林道に戻り、さらに下っていくと「野性ザルに対する心得(野猿と人間とのかかわり方)」という掲示があった。「農作物への被害防止のため次の事項を守ってください」と消えかけた文字で書いてあり、やってはいけないことを図で示しているようだが、イマイチ分かりにくい。目を合わせるな、背中(スキ)を見せるな、餌を与えるな、触るな、ということか。
同じものを前にも厚木市内の別の場所で見たことがある。その時も「野性」の漢字表記が気になったのを覚えている。
まもなく人家が現れ、七沢温泉に出た。厚木市の奥座敷といえる温泉郷で、日帰り入浴もできるようだが、まだまだ歩くつもりだし、素通りする。
ここからは本厚木駅までバスがあり、いつでもバスに乗れるので、気分的には楽である。現在、時刻は14時を過ぎたところ。
つづく