みどりの日。この季節になると、新緑の山に行きたくなる。ということで、分解・袋詰めした自転車を担いで京王線に乗り、高尾で中央本線に乗り継いで、山梨県の塩山駅までやってきた。
山へ行くのに自転車、というのは普通の人にはありえない選択肢かもしれない。しかし、自転車好きの中には、今度はどこへ行こうか、と考える時、それは、どこの山に行こうか、どこの峠を越えようか、と考えるのと同じ、という人が少なくない。いわゆる「坂バカ」などと呼ばれる人たちだ。僕も最初は上り坂は極力避けたい方だったが、自転車ツーリングの経験を重ねるうちに、たまにそういう症状が出るようになってしまった。それでも、まだ「坂バカ」と自称するほどではないと思うし、そのぶん、レベルも低い。麓から頂上まで1秒でも速く到達しようとタイムを意識して、ひたすらペダルを回し続けるタイプが多いなかで、いろいろなものに目を向けながら、ゆっくりのんびり登るというのが僕のスタイルだ。僕にとって自転車はスポーツではなく、旅の手段なのだ!といえばカッコイイけれど、要するに、休み休みでないと登れない、というのがホンネでもある。
(塩山駅前の武田信玄像)
ここで愛車を組みたて、コンビニで食料や飲料水を調達し、9時前にスタート。すぐに国道411号線に入る。要するに青梅街道で、この道をまっすぐ行けば東京・新宿に通じているわけだ。山梨県内では大菩薩ラインなどと呼んでいるらしい。
塩山の標高は大体400メートルほどで、これから越える柳沢峠は1472メートルなので、1000メートル以上の標高差を登ることになる。もっとも、過去にも何度か走っているので、コースの全体像は分かっている。峠まで19キロである。
最初から上り坂で、古い町並みを抜けると、たちまち山里の風景が広がる。あたりにはブドウや桃、スモモの果樹園が多い。まったく日蔭がなく、暑い。
富士山は頭だけのぞかせている。
甲府盆地の彼方に南アルプスの峰々。
この地方の鯉のぼりは2本立てで、1本は普通の、でも立派な鯉のぼり。もう1本は家紋や武者絵などが描かれた幟。その家の男の子の名前が書かれているものもある。
火の見やぐら愛好家(?)としては、こういうトラディショナルなやぐらが聳えていると、素通りできない。
懐かしい看板。こういうのも素通りできない。
側溝を澄んだ水が激流となって下ってくる。
この道を走るのは10年ぶりぐらいかな、と思うが、やっぱりきつい。まぁ、急ぐ必要はないので、のんびり行こう。
桃の花と南アルプス。
けっこう登ってきた。ツバメが飛び交い、ホオジロやキセキレイの声も聞こえる。
標高が高くなると、桜の花もまだ咲き残っている。
こちらが地を這うようにのろのろと山越えに挑んでいる遥か上空を飛行機が飛んでいく。あの中に一体何人の人間が乗っているのだろう?
最初のトンネルの手前でシカの声を聞く。あたりに足跡も見かけたから、きっとたくさんいるのだろう。
そして、この場所で今季初めてオオルリとセンダイムシクイの声を聞く。
ハーフループの高架橋を行く。
いつしか富士山に雲がかかっている。昼が近づくにつれて逆光で霞んでしまうはず。
まだまだ峠は遠い。前に走った時はまだ工事中だった新ルート。
画面手前の道を左へ行くと、右へカーブして、遠くの高架橋に通じる。
まだあんなに登るのかぁ…。標高1000メートルを超え、まだ緑も乏しい。
途中から従来のルートに入る。
オオルリ、ミソサザイ、ヤブサメなどの声を聞きながら、ゆっくり登る。コマドリの声も聞こえた。
そして、ついに柳沢峠に到着。標高1472メートル。反対側から登ってきた自転車も多数。女性もいる。
富士山は目をこらさないとわからないぐらい霞んでしまった。
15分ほど休憩して、下り始める。あとは基本的にずっと下り基調。青梅あたりまでは楽に行けるだろう。
下りだとスピードは軽く時速50キロぐらい出てしまうが、舗装が荒れていたり、石ころが落ちていたり、路面に亀裂や窪みがあったりするので、安全第一で下る。
反対側から次から次へと自転車が登ってくる。スタート地点は奥多摩駅や青梅あたりだろうか。東京側から登るのは距離が長くて大変だろうと思うが、どうなのだろう。柳沢峠から青梅まで60キロほどである。
柳沢峠を越えてもまだ山梨県内だが、峠の北側は多摩川の源流域にあたり、周囲の山林は東京都の水源林として保護されている。新緑がピカピカ光っている。
桜もまだ美しさを残している。
今年2月は山梨県内で記録的な大雪が降ったが、日蔭にはまだ雪が残っていた。
この水も多摩川に通じている。
新緑の中を下っていく。
またオオルリの声が聞こえた。自転車を停めて探すと、一瞬で見つけられた。
下の写真のどこにいるか、わかりますか?
真ん中の枯れ木(?)のてっぺんにオオルリ。
ここでも新ルート。以前は坂を下ってヘアピンカーブで折り返したが、今はトンネルへ。旧ルートは封鎖されているが、このまま廃道となってしまうのだろうか。
ここにも雪。雪渓という感じで、乗ってみたら意外に固かった。
丹波山村に入って、道の駅でしばらく休憩。シカ肉が名物になっているらしい。
さらに進むと、お祭という集落。
まもなく渓谷からダム湖に様相が変わる。奥多摩湖だ。
山梨県丹波山村から橋を渡って東京都奥多摩町へ。
留浦(とずら)にある浮き橋を渡ってみた。
昭和32年に完成した小河内ダムが見えてきた。
ダム建設の資材輸送用に敷設された鉄道の廃線跡。小河内ダムから奥多摩駅まで随所に見られる。
結局、青梅駅前まで走って、電車で帰る。
今日の走行距離は85.3キロ。