茨城県のローカル線旅(その4)

 9月3日に茨城県まで出かけた話の続き。

 ひたちなか海浜鉄道に乗ったり降りたりして常磐線勝田駅に戻った時点で、常磐線をもう少し北へ行ってみるか、水戸から鹿島臨海鉄道に乗るか、水戸線に乗るか・・・といろいろな選択肢があったが、とりあえず勝田14時11分発の水戸行きに乗り、水戸から土浦行き、土浦から品川行きと乗り継ぐ。茨城県南部の小さなローカル線、関東鉄道竜ケ崎線に乗ってみようと思う。目的地が観光地などの場所ではなく、鉄道路線というのは普通の人には理解しがたいことかもしれない。

 土浦を15時32分に出た列車は荒川沖、ひたち野うしく、牛久と停まっていく。牛久といえば高さ120メートルの牛久大仏が有名だが、僕はまだ見たことがない。しかし、それだけの高さがあるのなら車窓からも見えるのではないかと、ひたち野うしく~牛久間で大仏があるはずの左側の車窓に目を凝らすが、線路際に住宅が立ち並び、なかなか視界が開けない。家並みが途切れたとしても、送電線鉄塔などが紛らわしくて、なかなか見分けることができない。それでも、大仏の頭らしきものがちらっと確認できた。もう少し高く聳え立っているのかと思ったが、頭しか見えないのだった。しかも、たぶん後頭部。

 さて、牛久の次は龍ヶ崎市駅である。かつては佐貫駅といったが、いつのまにか駅名が変わっていた。調べてみると、2020年3月14日のダイヤ改正時に改称されたのだった。

 この駅が竜ケ崎線の乗換駅である。15時49分着。

 常磐線の駅に隣接する竜ケ崎線の駅は佐貫のままだった。竜ケ崎線は佐貫と竜ケ崎を結ぶ4.5キロの小さな路線で、全区間龍ヶ崎市内にある。JRの駅と市の名前は「龍」の字を使い、竜ケ崎線とその終点は「竜」の字である。市の中心市街地に近いのは竜ケ崎駅で、常磐線は市のはずれを走っているから、その間を結ぶ鉄道として竜ケ崎線があるわけだ。

 竜ケ崎線には一度だけ乗ったことがあるが、ずいぶん前のことであまり印象に残っていない。それで改めて乗ってみようと思ったのだ。佐貫駅のホームで待っていたのはキハ532。そんなに新しい車両ではなさそうだ。前回(たぶん1980年代)もこんな車両だった気がする。

 調べてみると、デビューは1981年だから今年で41歳。しかも、国鉄から払い下げられたキハ20の機器を流用し、車体だけ新製したのだそうだ。下半身は41歳よりさらに古いということになる。

 車内は片側3ドアのロングシート。面白いのは運転台が佐貫寄りは通常通り左側だが、竜ケ崎寄りは右側にあること。つまり運転席が車両の同じ側にあるわけだ。これは佐貫~竜ケ崎間に行き違い施設がなく、すべて一本の線路の同じ側にホームがあり、ワンマン運転で運転士がドアの開閉操作やホームの安全確認がしやすいように、という配慮からの設計だろう。

 ヘッドマークや行先票に「おかげさまで100周年 関東鉄道」の文字がある。関東鉄道の前身にあたる鹿島参宮鉄道の創立が1922年9月3日。つまり、今日が本当に100周年の記念日なのだった。

 さて、列車は16時に佐貫を発車。車内にはここでも若者から年配の人までカメラを手にした乗客が多い。普通の乗客といえるのは、女子高生1名とそれぞれワンカップと缶ビールを手にしたおじさん2名ぐらい。おばさんも2、3人は乗っていたか。

 列車は常磐線から分かれて左へカーブすると、住宅地を抜け、田園風景の中へ出ていく。ほとんど一直線。

 途中、入地という小駅があっただけで、竜ケ崎には16時07分に到着。わずか7分の旅。

(竜ケ崎寄りの運転席の位置が通常の車両とは逆)

 入地も竜ケ崎も駅は線路1本にホーム1面。ホームはすべて竜ケ崎に向かって右側にある。

 駅前に立つ解説板で知ったことだが、この鉄道の開通は関東鉄道の設立より古い1900年8月で、今年で122周年。竜ケ崎線そのものが「龍ヶ崎市民遺産」となっているそうだ。

 竜ケ崎線は1本の線路の上を列車が行ったり来たりしているが、竜ケ崎駅には留置線があり、2両が休んでいた。キハ532より新しいキハ2001と2002。この3両が竜ケ崎線に在籍するすべての車両ということになる。

 2002は地元のマスコットキャラクター「まいりゅう」にちなんだラッピングトレインで、あとで知ったことにはつり革が龍ヶ崎名物のコロッケになっているらしい。ひたちなか海浜鉄道のほしいももユニークだったが、コロッケのつり革も見てみたかった。

コロッケトレイン(龍ケ崎市)うぃーくえんど茨城

 竜ケ崎は歴史のある城下町で、見どころもいろいろあるようだが、今日はこのまま折り返す。

 16時40分発に乗り、3分で入地駅に到着。ここで下車。降りたのは僕だけだった。

(竜ケ崎線でもこの駅だけに残る伝統的な関鉄スタイルの駅名板)

 次の列車まで20分待とうかとも思ったが、全線で4.5キロなのだから、ここから佐貫まで歩いても大したことはない。ということで、歩き出す。

 近くの民家の生垣でスズムシが鳴いている。野生のスズムシの声を聞くのはたぶん2度目だ。前回も茨城県内で、筑波鉄道(旧関東鉄道筑波線)の廃線跡のサイクリングロードを走っている時に聞いたのだった。

 ここでもスズムシはエンマコオロギなどに交じって、あちこちで鳴いていた。

 黄金色の田んぼを眺めながら、のんびり歩く。

 まもなく踏切の音が聞こえ、佐貫で折り返した竜ケ崎行きが走り過ぎていった。

 懐かしい汽車の標識を発見。

 また、竜ケ崎から戻ってきた。片道7分だから、すぐに戻ってくる。田園風景の中を走る列車が撮影できるポイントがないかと探してみたが、見つからず諦める。

 次第に農地より住宅が増え、立派な旧家もあったが、新しい分譲住宅が多くなる。

 途中、雑草だらけの公園があり、ペリカン水飲み場があった。これは初めて見るので、公園どうぶつウォッチャーとして写真を撮っておく。竜ケ崎市立はなみずき公園。

 予想よりは時間がかかったが、とにかく佐貫=龍ヶ崎市駅にたどり着き、常磐線で帰る。